2012年4月14日土曜日

研究論集 | 佐々木合気道研究所


【第135回】 足と腹を結ぶ

合気道の技は手の遣い方も大事だが、足遣いも大事である。しかし、初心者のうちは手の遣い方には注意するが、足の遣い方には注意を払わないので、技も決まり難いわけである。

足は手と同じように、腹・腰に結んでいなければならない。足が腹・腰に結ぶから、腹と結んだ手とも結び、手と腹と足が一体となって連動して動けることになる。足が腹・腰に結んでいなければ、足の力、下半身の力が上手く遣えず、上体だけの力になってしまう。

手は意識し、注意して遣えば、上手く遣えるようになるものだが、足は脳から遠いためか、意識しても思うように遣えないものである。体で覚え込むしかないようだ。


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合気道の足の遣い方としては、まず腹・腰から動いて、それに足が従い、腹腰の下に足が納まり、重心がかかるようにすることである。撞木(しゅもく)足で、同じ側の手と肩と腰と足が一緒にその重心を落とす、所謂ナンバ歩行である。そして、足の上から体重をかけ、左右に重心が移動していく運足である。従って、足は蹴るように遣うのではなく、地に足を置くようにしながら進むのである。両脚を平行して立ったり歩んだりしては駄目だし、一般的な歩き方のように、前に出す手と反対側の足を出して動くのも駄目である。重心が両足の間にあると力が分散され、素早い動きがし難いので、避けた方がいい。勿論、踏ん張って足を止めたり、足を留めながら手だけ� ��使うのも避けなければならない。


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足が上手く遣えるための大事な条件の一つは、足と腹・腰が結んでいることであるから、結ぶ訓練をしなければならない。訓練をするにあたっては、足と腹・腰が結ぶとはどういうことなのかを、まず感覚的に知らなければならないだろう。それは、足が地に着いたときに腹や腰で感じる、腹腰がぐっと締まる感覚である。足が正しく地に着けば、腹・腰への圧力はしっかりしたものであるし、腹・腰に結ばない足は、足の力が逃げてしまい、腹や腰で力強く感じることはできない。また腹・腰と足が結んでいれば、腹・腰と足は地に同時に着き、踵が床と紙一重で動けるようになるので、音はしないようになるはずである。それがバラバラになったときには、ド� ��ドタ、ズルズルと音がするのである。


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次に、訓練の方法であるが、先ずは意識して腹で歩くことである。手と同様、接点ははじめに動かさないから、その対極である腹腰から動かすことになる。腹で足を進めたり、止めたり、速度を変え、方向を変えるのである。道場ではなかなか難しいので、稽古の終の自主稽古や、道場の行き帰り、会社の行き帰りなどに訓練する。平地だけでなく、階段もよい訓練場である。なぜなら、階段の上り下りでは、足からの力を腹・腰でより強く感じることができるからである。


そして、これが出来るようになったら、雲の上や水の上を歩くような、いわゆる天之浮橋を渡るように歩くことである。のしのし、バタバタあるくのではなく、音のしない、軽やかな歩みとなるようにするのである。これが出来てくると、地を足で掴む感じを、腹で感じられるようになるはずだ。これで音も無く、自由自在に軽快に、そして、地球の引力の助けを十分に受けて、重く、安定して動けるようになるわけである。

昔だったら、この歩行が出来てはじめて、泥棒は「泥棒足」を遣え、忍者は「忍者歩き」ができたはずである。

歩くのは、人間の基本である。正しい歩法ができなければ、合気道も上手くできるはずがないだろう。腹・腰と結んでいないと、足はいわゆる流れてしまうことになる。腹・腰と結んだ足をつくって、合気道の足遣いをしたいものである。

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